風邪や感染症を防ぐために、私たち体には生体防御機構が備わっていますが、
とりわけ重要なのが免疫システムです。
カラダの中に侵入してきたウィルスや細菌と戦う抗体や白血球、リンパ球…。
これらは、すべてたんぱく質を元に作られているのはご存じでしょうか?
目次
なぜ風邪をひくの?
私たちが一般に「風邪(かぜ)」と呼んでいるのは、
のどの痛み、せき、発熱、鼻水、頭痛、全身の倦怠感などの症状のことで、
医学的には、鼻炎、咽頭炎、喉頭炎などの症状を総合した
「かぜ症候群」といいます。
かぜの原因となる病原体は、多くがウイルスです。
その数、なんと200種類以上もあります。
一言で「かぜ」と言っても、実は季節ごとにウィルスが変わるのをご存知ですか?
<一般的な風邪症状を起こすもの>
ライノウィルス、コロナウイルス
<子どものかぜに多い>
RSウイルス、パラインフルエンザウイルス
<夏風邪の原因>
アデノウイルス
<毎年大流行>
インフルエンザウィルス
冬季に多いインフルエンザウイルス、
夏季に多いのはアデノウイルス、といったようにウイルスによって
流行時期が異なります。
ウイルス以外にも、一般細菌、肺炎マイコプラズマ、
肺炎クラミドフィラなど、特殊な細菌もかぜの原因になります。
かぜ発症のメカニズム
かぜ症候群は、ウイルスなどの病原菌が粘膜に付着して、
体内に侵入・増殖することからはじまるとされています。
実際、風邪として発症するかどうかは、環境要因や感染した人の免疫力によって
決定されます。
ウィルスや細菌などの病原菌は、くしゃみや会話による飛沫感染や
汚れた空気中に存在し、つねに体へ侵入してきますが、
体の免疫細胞が、たえず排除しようと働いています。
ところが、ストレスや栄養不良、疲れやアレルギーなど、
何らかの原因で免疫力が下がると、ウィルスや細菌の感染を
許すことになってしまいます。
すると免疫細胞が殺す数よりも、病原体の数の方が増えていき、
風邪の症状があらわれます。
免疫力が高ければ、まわりの人が風邪をひいていても、自分は発症しませんし、
感染したとしても軽い症状ですみます。
たんぱく質不足が免疫力低下を引きおこす?
細菌やウィルスが体内に侵入してきたときに働く免疫システム(生体防御機構)は、
3つの段階で私たちのカラダを守ってくれています。
一次防御(皮膚や粘膜のバリア)
かぜの初期症状として、鼻水や涙がでることを思い浮かべてください。
かぜの原因となるウィルスなどの病原体は、鼻やのど、目の粘膜から侵入するので、
鼻水や涙、痰を出して、粘膜に張りついた病原体を追い出しています。
鼻水や涙には、リゾチームという酵素や、ムチンという粘液成分、
IgA(免疫グロブリン)という抗体などを含んでいて、
ウィルスなどの病原体を殺し、侵入を防いでくれています。
ニ次防御(自然免疫)
胃液や血液にもリゾチームやIgA(免疫グロブリン)などが含まれていて、
一次防御で防げなかった病原体を殺してくれています。
三次防御(獲得免疫)
一次・二次防御で阻止できないと、
カラダは特有の抗体をつくって病原体を集中的に阻止しようと働きます。
このとき、すでに病原体は体内に侵入しています。
一部の細胞が感染することで病原体の特徴をつかみ、抗体をつくります。
「獲得免疫」または「特異的免疫〔とくいてきめんえき〕」と呼ばれています。
これを担うのが、白血球のなかのリンパ球(T細胞・B細胞)です。
「リンパ節が腫れる」、「白血球の数値が高い」
こんな風に言われた経験がある方は、免疫メカニズムがフル稼働しているサインです。
年齢とともに免疫力は下がりやすくなりますので、
一次・二次防御で対応できるカラダづくりをしておきましょう。
3つの段階に分かれる免疫システム。
皮膚や膜粘、ウィルスや細菌と戦う抗体や白血球、リンパ球のいずれも、
たんぱく質が元に作られています。
そのためたんぱく質が不足すると、3段階の免疫システム全体のレベルが落ち、
免疫低下を招いてしまいます。
免疫システムの高いレベルを保つためにも、十分なたんぱく質を毎日摂取することが欠かせません。
しかし、無理なダイエットや外食、炭水化物に偏った食事によって
たんぱく質の摂取量が足りない人が多いのです。
とくに女性は、男性よりも食事量が少ないうえ、野菜中心に意識が強くなって
たんぱく質が最も不足しやすい栄養素になってしまっています。
また、毎月の月経では鉄だけでなく、たんぱく質も出ていきますし、
自律神経を整えリラックス効果のあるセロトニンやβエンドルフィンなどの
ハッピーホルモンをつくるにも、たんぱく質が使われています。
かぜの心配がある冬の時期には、
特にたんぱく質を意識した食生活を心がけるとよいですね。
あわせて摂りたいビタミン群
ビタミンも免疫力を高めてくれるので、意識して摂取してほしい栄養素です。
また、たんぱく質の代謝と体内利用にもビタミンは不可欠です。
特に大切なビタミンは次のようなものです。
ビタミンC
抗酸化作用で名高いビタミン。
とくに白血球の活性化に欠かせない栄養素です。
たんぱく質、ビタミンB群とともに摂ることで、
ウィルスや細菌に対しての抗体をつくり、
感染しない抵抗力をつけてくれます。
ビタミンB群
エネルギーをつくるビタミン。
ビタミンB₂、B₆、B₁₂がないと、たんぱく質が代謝できません。
免疫メカニズムでは、粘膜や皮膚の修復・再生をしてくれます。
なかでもビタミンB₁は、白血球の正常な働きに関わっています。
ビタミンA
粘膜の成分であるコンドロイチン硫酸の生合成をうながし、
のどや気管支の粘膜を保護します。
まとめ
日ごろから、自律神経を整えたり、免疫力を高めるたんぱく質やビタミンC、
ビタミンB群を十分に補給することが、
風邪や感染症予防にとても重要です。
普段の食事だけでは不足しがちな人は、プロテインやマルチビタミンなどのサプリメントも
活用してみてください。
【監修】豊原悠里
管理栄養士/予防医学指導士
大手化粧品会社にてインナービューティーのカウンセリング、トレーナーを経て、精神科クリニックで管理栄養士・代替医療カウンセラーに従事。発達の問題やメンタルケアを中心に予防医学、栄養療法のコラムやセミナー、執筆サポートをてがける。